東京大学医科学研究所が中心となり運営しています

組織球症とは若年性黄色肉芽腫(JXG)
Juvenile Xanthogranuloma, JXG

  • Home
  • 患者・ご家族の方
  • 組織球症とは
  • 若年性黄色肉芽腫:Juvenile Xanthogranuloma(JXG)

若年性黄色肉芽腫(JXG) とは?

若年性 黄色肉芽腫 おうしょくにくげしゅ (juvenile xanthogranuloma:JXG)は、主に乳幼児や小児にみられるまれな病気です。小児の非LCHの中で最も頻度が高く、皮膚にできる良性のしこり(結節)が特徴です。多くの場合、皮膚だけにとどまり自然に治ることもありますが、一部では目や脳、内臓に広がり、深刻な症状を起こすことがあります。
従来は炎症による反応性の病気と考えられていましたが、近年の研究で「MAPK経路異常(細胞の増殖に関わる遺伝子の異常)」が関係していることがわかり、腫瘍性疾患として再定義されつつあります。
組織球症は2016年にHistiocyte Society(国際組織球症学会)から新しい分類が提唱され、JXGは、組織球症という病気のグループの中で「皮膚だけにとどまるタイプ(C-Group)」と「複数臓器に広がる多臓器型タイプ(L-Group)」に分けられます。本ページでは、JXGの特徴や治療について説明します。

若年性黄色肉芽腫(JXG)とは?

若年性黄色肉芽腫(JXG)の病態

若年性黄色肉芽腫(JXG)の病態

JXGは、骨髄系の細胞(単球やマクロファージ)から生じた異常な細胞が皮膚や臓器に集まることで発症します。最近の研究では、この病気の背景に「MAPK経路異常(細胞の増殖に関わる遺伝子の異常)」があることがわかっています。
具体的には、MAPK経路に関わる遺伝子(MAP2K1MEK1〕やBRAF)の変化が報告されています。さらに、より上流にあるチロシンキナーゼ受容体(CSF1RNTRK)や、その直下のシグナル伝達分子(SYKRAS)に関連する異常も見つかっています。

神経線維腫症1型(NF1)の患者さんは、生まれつきNF1遺伝子に異常があり、RASという分子が常に活性化しているため、MAPK経路が刺激され続けてJXGを発症しやすいと考えられています。また、若年性骨髄単球性白血病もNF1やRASの異常で発症しますが、JXGを合併するケースもあります。
さらに、チロシンキナーゼ受容体のALK遺伝子が他の遺伝子と融合して組織球症を起こすことがあり、これは「ALK陽性組織球症」と呼ばれます。症状や病理検査の所見がJXGと似ているため、診断が難しい場合があります。

JXGは、皮膚だけにとどまるタイプ(C-Group)と、複数の臓器に広がる多臓器型タイプ(L-Group)に分けられており、特に多臓器型ではMAPK経路の異常が多く見られます。若年発症のエルドハイム・チェスター病(Erdheim–Chester disease:ECD)と似ているという見解もあり、これらの違いについては現在も研究が進められています。

若年性黄色肉芽腫(JXG)の病型・症状

JXGは症状や広がり方によっていくつかのタイプに分けられます。主な病型は次のとおりです。

図1:臓器浸潤頻度を示す円グラフ
図1:臓器浸潤頻度を示す円グラフ
  • 皮膚型:cutaneous JXG(皮膚だけにとどまるタイプ)
    最も多いタイプで、頭部や体幹にオレンジ色から黄色がかった丘疹・しこり(結節)が1つまたは複数現れます。多くの場合、痛みやかゆみはなく、数年以内に自然に消えることがほとんどです。
    図2:JXGの症状(皮疹)(赤ちゃんの後頭部のイラスト)
    図2:JXGの症状(皮疹)
    • 小児(特に1才まで)の発症が多い
    • 皮疹のみで3-5才頃までに自然軽快する例がほとんど
    • 新生児ではまれに内臓にも病変ができ、化学療法が必要となる。
  • 眼病変型:ocular JXG(目にできるタイプ)
    乳児期に虹彩にしこり(腫瘤)ができることがあります。これにより眼内出血や緑内障を起こすことがあり、放置すると失明に至る可能性があります。視機能に直結するため、早期発見と治療が重要です。
  • 中枢神経型:CNS JXG(脳にできるタイプ)
    JXGにおける中枢神経病変は非常にまれで、全体の約1%です。脳に病変が生じると、けいれん、視力障害、運動麻痺、頭痛や吐き気などが起こることがあります。さらに、ホルモンの働きに影響し、尿崩症や成長ホルモン欠乏症などの内分泌異常をきたす場合もあります。症状が永続的に残る場合もあるため注意が必要です。
  • 全身型:systemic JXG(多臓器に広がるタイプ)
    全JXG症例の1~5%にみられるまれな病型で、肝臓、脾臓、肺、脳、骨髄、眼など複数の臓器に病変が広がります。症状は病変部位によって異なり、肝脾腫、血球減少、呼吸障害、神経症状、内分泌異常、視力障害など多彩です。特に生後6か月以内に発症することが多く、原因不明の血球減少、肝臓障害、呼吸障害をきたした乳児では、この病型を疑う必要があります。致死率が高く、早期診断と治療介入が求められます。
    図3:JXGの症状(赤ちゃんの全身図のイラスト)
    図3:JXGの症状(全身型)
    • 肝臓、脳、肺などに腫瘍の結節(固まり)が多発する
    • 肝臓や脾臓が腫れ、腹水が溜まってお腹がパンパン!
    • とても具合が悪い

若年性黄色肉芽腫(JXG)の診断・検査

JXGの診断は、皮膚や臓器にできた病変の一部を採取して調べる『生検』で行います。顕微鏡で見ると、泡のような細胞(泡沫状組織球)や特徴的な巨細胞が確認されます。さらに、特定のたんぱく質の有無を調べる免疫染色検査で、JXGとランゲルハンス細胞組織球症(LCH)を区別します。JXGではCD68陽性、CD163陽性、CD1a陰性、Langerin(CD207)陰性という特徴があり、このパターンがLCHとの鑑別に重要です。 他の組織球症と同様に、JXGにも細胞の増え方に関わる遺伝子の異常が見つかっており、病気の背景に腫瘍性の性質があることが示されています。

図4:遺伝子変異頻度を示す円グラフ
図4:遺伝子変異頻度を示す円グラフ

診断を補助するために、次の検査が行われます。

画像検査 超音波、MRI、CT、PET/CTで全身の状態を確認
眼科検査 スリットランプで目の中のしこりや出血を確認
血液検査 血液の細胞数や肝臓・腎臓の働き、炎症の有無を確認
骨髄検査 血液検査で異常がある場合に実施
遺伝子検査 BRAFMAP2K1などの遺伝子の変化を調べ、治療方針の決定に役立てる

若年性黄色肉芽腫(JXG)の治療

JXG治療は、病型や症状の程度によって異なります。

皮膚型 多くは治療不要で自然消退。整容目的や診断のために外科切除を行うこともある
眼型 出血や緑内障を伴う場合、ステロイドの点眼や全身投与を行うことがある。孤立した眼病変は外科的切除で良好な経過をとることがある
中枢神経型 病変が1か所だけで手術で取り除ける場合は外科的に摘出する。病変が複数存在する場合や切除困難な場合には、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)の治療に準じてステロイド剤とビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン)などを用いた抗がん剤治療を行う
全身型 治療法は確立されていないが、ステロイド単独では不十分なことが多く、ビンクリスチン、シタラビン、クラドリビンなどLCH治療に準じた化学療法を行う。難治例に対しては、造血幹細胞移植や分子標的薬(BRAF阻害薬、MEK阻害薬)の使用も検討される
  • BRAFV600E変異陽性の場合(JXG患者の10%未満):日本では2023年に保険承認された、「標準的な治療が困難なBRAF遺伝子変異を有する進行・再発の組織球症にBRAF阻害薬であるダブラフェニブ(daBRAFenib)とMEK阻害薬であるトラメチニブ(trametinib)の併用療法」が使用可能
  • その他の遺伝子異常:MAPK経路の変異にはMEK阻害薬、ALK遺伝子変異にはALK阻害薬の効果が期待される可能性がある
薬理分類 一般名 商品名
微小管阻害薬 ビンクリスチン オンコビン®
微小管阻害薬 ビンブラスチン エクザール®
代謝拮抗薬 シタラビン キロサイド®
抗がん薬 クラドリビン ロイスタチン注®
BRAF阻害薬 ダブラフェニブ タフィンラー®
MEK阻害薬 トラメチニブ メキニスト®